アルファにしてオメガ

 彼はアヅマにとって王子様だった。アヅマはお姫様ではないけれど、彼は王子様だった。アヅマは家に居場所がなかった。家にいると、働いていない両親に「躾」をされるので、家に帰りたくなかった。だから放課後はランドセルを背負ったまま、公園で過ごした。彼はそんな時に公園に現れては、アヅマによくしてくれた。学年の違う二人には共通点は同じ小学校ということしかなかったけれど、宿題を教えてもらったり、本を読んだり、仲良く過ごした。いつもボロボロで、クラスで誰にも見向きもされない、むしろ虐められている自分を構ってくれるのは、彼だけだった。だが、幸せはいつまでも続かなかった。アヅマが二年生に上がる頃だった。彼が遠くの町へ引っ越すのだという。それを聞いたアヅマは泣いて、引っ越さないでと駄々を捏ねたが、ただの子供である二人にはどうしようもないことだった。彼がこの町を出ていく日、公園で摘んだ小さな花を手渡した。何も持たぬアヅマに出来ることは、それだけだった。彼は嬉しそうに笑ったのが嬉しくて、アヅマも笑った。彼が町を去った後、アヅマから笑顔が消えた。

 バイトが終わってアパートへ近道をしようと、裏路地を歩いているところ、何だか騒がしい声が聞こえてくる。何かトラブルだろうか。声がする方へ近付き、ひっそりと覗き見た。大柄な男が小柄な誰か、男か女かわからないがーー、に覆い被さっている。漂ってくるフェロモンで感じ取った。あの小柄な方はオメガだ。突然ヒートでも来てしまったのか知らないが、それに誘発されたアルファがオメガを襲おうとしている。アヅマは、小さく溜息を吐き、スマホに入っているエマージェンシーコールアプリをタップする。近年、第二の性に関する法律が整備され、軽視され続けたオメガ性の人権向上が図られた。完全にとまではいかないまでも、昔にあったようなオメガ蔑視は和らぎ、アルファ、ベータと他の第二の性と同等の扱いを受けられるようになってきている、という建前が出来た。だからといって、この時代になってもオメガを差別する者は多く居て、オメガというだけで不当な扱いを受けたり、ひどい時にはレイプされたりすることもある。そのため、多数のオメガは自分の第二の性を隠して生きている。そんな中、このエマージェンシーコールはオメガのために整備された、関連法が施行されると同時に設立された公益財団法人が運営する緊急連絡先だった。このエマージェンシーコールでは、駆け付けてくるのは警察ではなく、警備会社である。公権力である警察も法律が作られると、オメガに対する扱いを変えようという動きが見られたが、役所仕事の上に根強いオメガ差別意識が邪魔をして、なかなか上手くいかず、業を煮やしたNPO法人が警備会社と連携を取ることにしたのだった。
(これで大丈夫っしょ。警備員来るまで、抵抗頑張って)
アヅマはその場を後にした。オメガであるアヅマでは、あの場に割って入ったとしても、アルファには力で敵わない。むしろ、自分が攻撃される可能性の方が高い。被害者が一人から二人になってしまう。そのため、さっさと立ち去ってしまうのが得策だった。
 アヅマが小学校に入学する時に受けた、一斉健康診断では、ベータと診断された。アヅマはそれは当然だと思った。両親もベータだったからだ。しかし、中学校に上がって受けた健康診断で、オメガと診断された。第二次成長期で揺らぎやすい体が、第二の性をオメガへと変貌させた。何度診断を受けても、オメガだった。何度も健康診断を受けることになったことと、第二の性がオメガに変わったことで、両親はオメガ蔑視者だということが発覚した。「躾」は苛烈さを増した。オメガの頸を守る「首輪」も、発情期を抑える抑制剤も与えられず、発情期が来ると必ず両親は笑ってアヅマを家から締め出した。息子がアルファに襲われることを心待ちにでもするかのように。実際、アルファに襲われたこともあり、アフターピルなど買えないので、妊娠していないかと怯えて過ごすこともあった。オメガがほとんど居ない中学校では、奇異や好奇の目で見られて過ごした。友人など出来ようもなかった。
 ある日、転機は訪れた。両親を乗せた車が事故に遭い、両親が死んだ。引き取ってくれるような親戚もなく、アヅマは児童養護施設に引き取られて、やっと人並みの生活を送れるようになった。両親から「躾」をされることもなく、「首輪」も抑制剤も与えられ、アルファに怯えて暮らすこともなくなったのだ。高校を卒業すると、施設を出て一人暮らしを始めた。アルバイトを転々としたが、今はコンビニでアルバイトをしている。子供の頃住んでいた町を離れ、東京で暮らしている。東京で暮らすのは、昔の自分を誰も知らないためだ。ボロボロで悲惨だった自分。誰も他人に干渉しない東京は過ごしやすかった。田舎だったあの町とは違って、少しは第二の性の平等もあった。アヅマは春夏秋冬、ハイネックの長袖を着ている。ハイネックなのは「首輪」を、長袖なのは「躾」の跡を隠すためである。
 時々思い出す、幼い頃の、あの一年だけの、幸せな日々。歳上の、唯一友達と呼べた、彼。思い返せば、彼は希少なアルファだったのではないかと思う。オメガはアルファよりも希少だけれど、貴ばれ方が全然違う。アルファは歓迎され、オメガはそうではない。よくよく思い出してみれば、彼は幼いながらに同性の自分から見ても端正な顔立ちだったし、頭も良かった。公園だったり、運動会での彼は運動神経が良かった。短距離走も、リレー走でも一番だった。口は悪いが誰よりも優しかった。大人になった彼はどんな人間になっているだろう? でも、と思う。彼はアヅマがオメガだと知ったらガッカリしてしまうのではないだろうか、と。親がオメガを差別していたら、子供も自然とそうなる。彼の親はどんな人たちだったかは知らないけれど、もしそうならーー。
(嫌だな……)
もう会うこともない、ともだち。けれど、そんなことを想像したら気分が悪くなってしまった。彼の記憶の中では、ただのベータの子供のままで居させてほしいと、願った。

 平日のオフィス街を歩く。普段はこんな所に用事はないのだけれど、仕方ない。オフィス街にある系列店でのヘルプを頼まれたのだ。マップアプリを見ながら、店へ向かう。ふと立ち並ぶ小洒落たカフェのテラス席に目を奪われた。
(え……?)
ブリーチしているのに傷んでいる様子もない金のロングヘア。派手なスーツにシャツ。随分と派手な出立ちだが、よく似合っている。その端正な顔立ちには、嫌味のない笑顔があった。
(ミツギくん?)
子供の頃とまるで変わってしまったが、あれは小学生の頃の唯一友達だった彼だ。大人になっても、あの頃の面影がある。
「ミ……」
思わず声をかけようとしたが、ミツギは自分の正面に座っている人物と熱心に会話していて、こちらにはまるで気付かない。テーブルには資料なのか書類とノートパソコンが広がっている。打ち合わせでもしているのかもしれない。相手は女性で、にこやかに会話しているのが絵になる。
(やめよう。あっちは俺のこと覚えてねえかもしれねえし)
何だか惨めな気分になって、歩を早めた。
(あーあ、早く帰りてえな)
頸がチクリと疼いた。
 その後も何度か同じ店にヘルプに行ったが、ミツギを見ることはなかった。当然だ。あんなに広いオフィス街で、偶然同じ人物を見かけることの方が難しい。聳え立つビル群のどこかに勤めているのだろうか。そんな詮無いことを考えたが、もう見かけることもないのだから。諦めることには慣れている。思い出は思い出として残しておけばいい。考えに蓋をした。
 いつものコンビニで働いている時、自動ドアが開いた。客が入ってきたのだろう。ふと、微かにいい匂いがするなと思った。
(フェロモン……? いや、違うな)
目の前に客が立ったので、慌てて意識を戻して、慌ててレジを打つ。先ほどのいい匂いが強まっていることに気がついた。チラリと客の様子を伺って、心臓が止まりそうになった。ミツギだった。ミツギが何故かこのコンビニに居る。前見かけたオフィス街からは何駅も離れている。
「ミッ……!」
「ミ……?」
ミツギは訝しげな顔をした。
「失礼。もしかして、どこかでお会いしたことが?」
その言葉に、アヅマは落胆した。ほら、やっぱり覚えていない。あの思い出を大切に大切に取っておいて、宝物にしていたのは、自分だけなのだ。答えないアヅマを不審そうに眺めながら、アヅマの胸元で視線が止まった。名札を見ている。
「アヅマ……? アヅマ……。もしかして、小学校の時の一年坊主?」
「え……、覚えてるの?」
警戒を解いた表情のミツギは、口の端を上げて笑った。
「たりめーだろ。どんだけ世話してやったと思ってんだ」
「そっか、そうだよな」
何時に仕事終わるんだ、と聞かれたので、十七時と言うと、時間になったらまた来ると行って、店を去った。まさか再会するだなんて、思いもしなかった。らしくもなく、テンションが上がってしまった。退勤した後、店の表側にまわると、ミツギが立っていた。声をかけると、振り向いて、あの頃と変わらない笑みをアヅマに向けた。
「久しぶりだな」
「うん」
「どっか、店入るか」
連れ立って駅前のファミレスに入った。二人で飲み物を注文して、席に座る。
「大きくなったな、お前。昔はあんなにチビだったのに。何年振りだ?」
「大人になったんだから、大きくもなるだろ。うーん、十五年ぶりくらい?」
「もうそんなに経つのか。仕事はしてんだろ? というかコンビニで働いてんだから、フリーターか?」
アヅマは頬を掻いた。
「そう。ミツギくんは何してるの?」
「ミツギくんなんて言われると面映いな。ミツギでいいぜ。もう先輩後輩ってわけでもないし」
「じゃあ……、ミツギ」
「俺は建築士やってる。まあ、小さい事務所だがな。今日はこの辺で現場仕事があって、来た」
やっぱり彼は頭が良かったのだろう。そんな難しい仕事に就いているとは思わなかったけれど。
「前、他店に応援に行った時、ミツギを見かけた」
「声かけりゃいいじゃねえか」
「なんか、女の人と打ち合わせ中ぽかったから」
「ああ……」
思い当たることがあったのか、ミツギは苦笑した。その日は連絡先を交換して別れた。まさか、ミツギと再会するとは思わなかった。あまり運のない自分にしては、ツイてると思った。

 三ヶ月に一度の一週間。あれはくる。アヅマはこれから一週間、発情期だ。抑制剤を飲む時もあるが、保険が効くとはいえ、毎度毎度買ってもいられない。だからたまにこうして、発情期を過ごす。食料も買い込んだから、外へ出る必要もない。発情期を過ごしていると、自分が獣にでもなったような気分になる。ひたすら性行為のことしか考えられなくなって体がアルファを求める。後孔から愛液を垂れ流し、ひたすら陰茎を擦って性欲を鎮めようとするが、高まるばかりで、どうにもならない。そして思い浮かぶのはミツギの顔だった。
(そんな筈じゃないのに、なんで)
彼は良き友人であって、好きな人ではないのに。ミツギを思い浮かべながら、後孔に指を突き入れると、愛液が溢れた。三日前、今週末会わないかと彼からメッセージが来たけれど、発情期に被るので断った。
(あーあ、最悪……)
せっかく会えるチャンスだったのに。だからだろうか、自慰をしていて彼の顔が思い浮かぶのは。
(そんな筈ない、そんな筈ない)
アヅマは誰のことも愛さない。愛など求めたところで、返されることなどないのだから。

 三ヶ月後、ミツギからまた、会わないかとメッセージが来た。今回は発情期の一週間と被らないし、会うことにした。楽しみだった。大人になったミツギと酒を呑めるなんて、夢のようだった。だって彼が引っ越した時、もう二度と会えないと思っていたから。そして複雑な気持ちが少し。前回の発情期の時、自慰をする時、頭に浮かんでいたのが彼だったためだ。一時の気の迷いということにして、頭から追い出した。指定された小洒落た居酒屋で待っていると、彼がやって来た。
「待たせて悪りいな」
「別に。忙しいんだろ」
メッセージのやり取りをしていて知ったことだが、ミツギは一級建築士として働いていて、とても多忙なのだそうだ。その中で時間を作って、メッセージのやり取りをしたり、こうやって会う時間を割いてくれるのは、とても嬉しかった。やはり、昔と変わらず優しい人だった。酒やつまみを注文して、話を弾ませていると、奥の席の方からざわめきが届いた。
「何だ?」
「どうしたんだ?」
店員が慌てた様子で行き交っている。ミツギが店員を呼び止めた。
「どうしたんですか?」
「それが……」
店員は言い淀んだ。奥から客がだんだんやって来て、外へ出て行く。それが何故かはすぐに分かった。
「……! オメガのフェロモンか……?」
(ミツギ、フェロモン分かるんだ。やっぱり、アルファかオメガ……。まあアルファだろうけど)
オメガのフェロモンがだんだんと漂ってきた。ミツギが懐から錠剤を出し、水も飲まずに飲み下した。次第に怒号まで聞こえてくる。あてられたアルファが暴れてるのだろうか。
「俺たちも出るか」
「分かった」
手早く会計を済ませ、外に出る。外には中に居た客や、店が呼んだと思われるパトカーや警察官、オメガが呼んだ警備員らしき人物たちや、野次馬でごった返している。フェロモンに酔っているのか、足元が覚束ない者さえ居る。よろよろと動く男がアヅマに近付いてきて、倒れ込んできた。
「うわっ……」
首元を掴まれ、引っ張られる。
(やばっ!)
「大丈夫っすか」
「……ああ、すみません。ちょっと酔っちゃったみたいで……」
首元を直し、その男の後ろ姿を見送った後、振り返ると、かなり驚いた様子のミツギと目が合った。
「見た?」
「……」
ミツギがアヅマの腕を取って、歩き出した。それに逆らわずに着いていく。喧騒が遠のいていく。しばらく歩いて、誰も居ない公園に着くとベンチに座った。ミツギはアヅマから視線を逸らしている。
「…………お前、オ……オメガ、なのか?」
「……うん」
ミツギがこちらを見た。
「お前、昔自分はベータって言ってなかったか?」
「うん、ベータだったんだけど、中学の時、オメガって診断された」
「そんな第二の性が変わるとか、噂話にしかないようなこと本当にあるのか」
「何度調べてもオメガだった」
困惑した顔をした後、少し心配そうな表情を浮かべた。
「今、お前一人暮らしだろ? 大丈夫なのか?」
「やり過ごすのは慣れてる。今は「首輪」もあるし、抑制剤も飲めるし」
「……今はって、どういう意味だ」
しまった、余計なことを言った。
「大丈夫だから、気にすんなって。ってか、ミツギってやっぱりアルファなんだな。さっき抑制剤飲んでたろ?」
「ああ。ていうか、話を逸らすな。今はってどういう意味だよ」
誤魔化されてはくれないか。
「子供の頃は首輪も抑制剤も貰えなかった」
「抑制剤はともかく、首輪も?」
ミツギは知っていただろうか、アヅマの両親のことを。
「オメガの親ってもんは、首輪は与えるものだとばかり思ってたが」
「そういう親じゃなかったんだよ」
彼は知らなかったのだろう、あの頃、いつもアヅマがボロボロで家に帰りたがらなかった理由を。ミツギは真っ当な親に育てられたのだろうから、オメガの親がオメガである子供に首輪すら与えない理由など分かるはずもない。
「店に入ってからずっと気になってて、違うやつだと思ってたが、今はっきり分かった。アヅマ、お前もうすぐ発情期だろ」
「え」
「微かにフェロモンの匂いがお前からする」
ミツギは鼻が良いのだろうか。発情期まで一週間もあるというのに、そんな僅かなフェロモンを感じ取るだなんて。狼狽したことを気取られたくなくて、表情を繕う。
「よく、分かんね。そうだけど」
「一緒に過ごすアルファは居んのか」
「居ねーよ。居るわけないじゃん。抑制剤飲むよ」
「そうか」
これ以上、ミツギと顔を合わせていたら、変になりそうで、慌てて立ち上がる。
「じゃね。会えて嬉しかったよ。また」
走って公園を出る。駅まで脇目も振らずに。ミツギはガッカリしただろうか。アヅマがオメガだったことに。
(嫌だな)
 居酒屋でのことから一週間。無事に発情期を抑制剤でやり過ごして、さらに二週間。ミツギとのメッセージは途切れている。あれから何となく、話しづらくなってしまって、着たメッセージも既読無視している。バイトが終わって、夕飯を食べ、風呂に入った後、アプリゲームをしていると、ピンポンとチャイムが鳴った。
(誰だ? 今二十三時だぞ、何時だと思ってんだ)
非常識だと思って無視したが、しつこくチャイムが鳴る。
(ご近所迷惑じゃねえか! 俺がどやされるんだぞ)
仕方ないと思って、ドアを開ける。開けたドアの隙間から香るもの。
(アルファのフェロモン……? すげえ、強い。ラットか?!)
風呂上がりで今は「首輪」をしていない。慌てて閉めようとしたが、とんでもない力でドアを開けられた。立っていたのはミツギだった。
「ミツギ、どしたの。こんな夜中に」
へらへらとした顔を作って、ミツギから距離を取る。発情期のアルファは、オメガを自分のものにしようとする本能からか、凶暴になる。とにかく「首輪」を着けなければ。アヅマが後ろに下がると、ミツギが進む。二歩下がったので、彼は室内に侵入して来た。
「おい、靴くらい脱げよ」
あともう一歩、あと少しで「首輪」に手が届きそうだったのに、腕を掴まれてしまった。
(ア、アルファってこんなに力強いわけ?!)
強制的に近寄らせられた距離感にドギマギしながら、何をするのかと警戒していると、頸を掴まれ引き寄せられて、そのまま噛みつかれるようにキスされた。
「は……? ちょっと、え、まっ、んむ」
(あ……、あ……)
唇を押し付けたり舐めるだけでは飽き足らず、舌を捩じ込んでくる。入ってきた舌が熱くて、火傷しそうだと思った。腰を抱き寄せられて、密着する。彼の全身も熱くて、腰のあたりに硬いものが押しつけられる。
「んっ、やっ、あっ、ちゅ、う、うむう、ん……」
上顎を舌先でくすぐられ、頬の内側を舐められ、歯列をなぞられる。ちゅう、ちゅうと舌を吸われて、腰が砕けそうになった。
(やべ、きもちー……)
ミツギのフェロモンに混ざって、他の匂いがする。
(あ……俺も、発情期になっちまった)
ミツギとアヅマのフェロモンが混ざり合う。後孔が濡れてきたのが分かる。ミツギもアヅマが発情したのが分かったらしく、体を弄り始めた。手のひらで背中を撫でられ、背骨を辿られるともうダメだった。
「あっ、んんっ、み、つぎ……、やっ、ああっ……」
ベッドに押し倒されそうになったところで、最後に残った一欠片の理性で首輪を嵌めた。ミツギが忌々しそうに首輪を噛んでいる。首輪から覗く首筋に口付けられ、舐められて、陰茎が反応する。シャツを捲り上げられて、乳首を吸われる。片方は爪で弾かれ、摘まれたり、押し潰されたりする。
「ああっ、やっ、そんなに、したら……!」
他人に性的に触れられるのなんて初めてなのに、こんなにも反応してしまうのは、やはりオメガの性なのだろうか。ミツギが乱暴にアヅマのズボンを脱がして、パンツから取り出して、雑に陰茎を擦る。それだけで気持ちがいい。
(やべえ、他人に触られるって、こんなにいいの)
指が後孔に入ってくる。ビショビショなので、するりと入る。指一本なのに食い締めてしまう。中を拡げられて、本数が増えていく。ある部分でアヅマの体は、反応した。
「あああっ!」
ミツギはそこをしつこく撫でてくる。何だこれは。今までに感じたことのない快楽だった。それだけで息を切らしていると、ガチャガチャとベルトのバックルを外す音がする。取り出されたそれは今にも血管が浮き出て、はち切れそうに膨張していた。
(あー、あんなになってたら、相当つらいだろうに、前戯するだけの理性はあったのか)
足を広げられ、そこに入ってくる。
「あああ……!」
メリメリと押し入ってきて、苦しい。けれど、それ以上に気持ちがいい。後孔がアルファを受け入れるために出来ているのだと、やっと理解した。全部納めきらないうちに、腰を揺すりだした。浅いところを竿で擦られて、もう弾けてしまいそうだった。
「ミツギ……!」
ミツギが上半身を押し倒して、アヅマの口を塞ぐ。上も下も粘膜を擦り合わせて、ぐちゃぐちゃと混ざり合って、二人でひとつに溶け合っているようだった。
「なあ、もっと、奥まで、来て……!」
その言葉を口にした途端、ミツギのものが最奥を目指して、粘液の音を立てながら、侵入してくる。
「あっ、はあ、んんっ、そこっ、いいっ、もっと!」
直腸までミツギのものは届いた。
「ああっ、や、んっ、あんっ、そこ、そこ、気持ちイイッ」
ガツンガツンと腰を打ちつけられ、奥を亀頭でこじ開けられる。獣のようにひたすらアヅマを求めるミツギが愛おしくて堪らなくて、ミツギの背を掻き抱いた。理性なんて飛んでるはずなのに、こんな時でもミツギは優しい。
「あっ、やっ、ダメっ、もう、イク! あっ、ミツギ……! 来て、来てえ!」
アヅマが先に極まった。陰茎からは精液が飛び出して、後孔は絶頂を極めて震え、ミツギを締めた。
「うっ……」
上でミツギが呻いた。途端に注がれる体液にアヅマは感じ入った。ミツギのものが膨らみ、大量の精液はごぽごぽと後孔を満たした。アルファの射精は長い。注がれるだけで、腹がいっぱいになった。アルファとオメガの饗宴は一回だけでは終わらず、朝方まで続いた。

 アヅマが目覚めると誰かの腕が巻き付いているのに気付いた。振り向くとミツギだった。彼の寝顔を見るのは初めてだ。確認したがお互い全裸だった。かろうじて布団はかかっている状態だ。
(あー……、俺も理性飛んでてよく分かんないけど、朝方まで、ヤッてた気がする……)
稲穂色の髪がカーテンの隙間から差し込む陽光に照らされて、輝いている。思わず指に巻き付けてみる。さらさらで触り心地がいい。
(あ、睫毛長い)
顔を観察していると、彼の瞼が震えた。
「ん……」
瞼が開いて目が合う。
「起きた?」
「……」
寝惚けているのか、返事はない。だんだんと目の焦点が合って、ハッキリしてくると、ミツギは真っ青になった。
「! マジか……」
「何が? もしかして俺を襲ったこと?」
散々啼いたので、声が掠れるし、喉が痛い。
「ああ……」
現実を受け入れきれないのか、ミツギらしくなく煮えきらない態度だった。
「ラットで理性蒸発してたんだろ? 仕方ねえよ。アフターピル飲むし」
「悪りい」
「でもさ、ラットが始まって何で俺のところに来たの?」
「分かんねえ。気付いたらお前ん家向かってて、起きたらこうなってた」
決まりが悪そうなミツギを眺めながら、ふうん、としか思わなかった。
「それってさ、身近にいるオメガが俺だけだったからとかじゃね? 本能的にさ。別に俺のことが好きとかじゃねえだろうし」
「それは……」
抱かれる前は違うと思い込んでいたけれど、抱かれてハッキリと分かった。アヅマはミツギが好きだ。子供の頃からずっと。だから無理矢理抱かれてショックとかそういう気持ちは湧かなかった。むしろ幸せで、こんなチャンスに巡り合うなんて、ラッキーだった。二度とこんな機会はないだろう。思い出として深く刻み込もう。
「仕方ねえじゃん、生理現象なんだから。だからそんな気にすんなって。たまたま抱いたオメガが俺だったってだけっしょ? 俺も気にしねえし、無かったことにしよ」
ミツギは優しい人だから、気にしすぎなければいいけれど。今後も付き合いは続けたいから、事故だと思って忘れて欲しい。
「バカ。そんなわけいくかよ。責任取らせてくれ」
「はあ?? 責任? もしかして結婚でもするとか言うの?」
「……ああ、そうだな、そういう方法もあるか」
藪蛇だった。結婚というワードを出さなければよかった。
「俺さ、一生結婚するつもりねえし、子供も欲しいと思わないの。だからアフターピルも飲むし。そういう風にされちゃうと、逆に俺が困るわけ。だいたい、好きでもない相手と一晩寝ちまったからって、いちいち責任なんか取れねえだろ」
ミツギの手がアヅマの頬を撫でた。
「いや……、好きじゃないってわけでもねえ」
「はあ? 好きなの?」
「まあ……そういうことになる」
アヅマは本気で困惑した。
「抱いたから情が湧いちまっただけっしょ。理性飛んでて、どんなセックスしたかも覚えてもいないだろうに」
「確かにあんまり覚えてることはねえが、首輪が忌々しくて仕方なかった」
「それはアルファがオメガの頸に噛みつきたいっていう本能ってだけじゃねえか?」
彼の指がアヅマの首輪をなぞった。
「俺がこんなに傷だらけにしたんだろ」
「ちゃんと見えてねえから分かんねえけど、めっちゃ噛んでた」
「あと、抱いてる時すごい幸せだった」
「へ?」
意外な言葉すぎて、アヅマは頭が真っ白になった。
「ラットが始まった時、お前のことしか頭に浮かばなくて、お前をめちゃくちゃにしたかった」
アヅマに巻き付いている腕に力が入り、抱き寄せられた。ミツギの鼻がアヅマの旋毛に埋められる。
「お前ん家着いたら、ドアの隙間からお前のいい匂いがして、頭の中がもっとお前でいっぱいになった」
「…………気のせいだろ」
「お前の背中を見た時、ああ、俺が守ってやらなきゃならねえって思った」
理性が飛んでたのに、背中のことを覚えているのか。両親に「躾」された跡が残る、アヅマの醜い背中を。
「昔っからほっとけなかったんだ。いつも一人で、寂しそうにしてるお前が」
「ひとりぼっちだから、可哀想に思えただけだよ」
「俺が公園に行くと嬉しそうに寄って来て、何かしてやるたびに大袈裟に喜ぶお前が可愛くて仕方なかった」
「弟みたいなもんだったんだろ」
ミツギの腕を解いて、後ろを向く。背中に何かが触れる。引き攣れた皮膚を彼がなぞる。
「俺は結婚もしないし、恋人も作らないから」
「何で」
「言いたくない」
ミツギの指が一番大きな火傷の跡に触れた。
「これのせいか」
アヅマが両親に虐げられてきたという証。
「結婚したくないならそれでもいい。でも恋人くらい作ったって構いやしねえだろ」
「……恋人になって、いざ裸になってみたらこんな背中じゃ相手ドン引きじゃん。腕とかも傷だらけだし」
「別に俺は引かねえけど」
「俺は、ミツギと友達で居たいよ。恋人になったら、……いつか別れる時が来るじゃんか」
ミツギがアヅマを自分の方に向かせた。
「てめえ、付き合う前から別れることを考えてんのか」
「友達のままなら、ミツギが覚えてる小さい頃の俺のままで居られるんだよ。でも付き合ったら変わっちまう」
「俺はもう変わった。お前が好きだから。それにもう元には戻れねえよ。一回こんな関係になったら」
「何でそんなこと言うの。俺は大好きなミツギとずっと友達で居たい。たまにミツギに構ってもらえればそれでいいんだ」
ミツギはギュッとアヅマを抱き締めた。
「お前、俺のこと大好きなんか」
「あたりめーだろ、唯一の友達だぞ」
ミツギがふっと笑って、アヅマの髪を漉いた。
「恋人になればたまにじゃなくて、まあ、いつもとは言い難いが結構な頻度で構ってやれるぞ」
「魅力的だけどさ。俺とお前じゃ住む世界が違いすぎる。こんな育ちの俺とじゃ幸せになれねえよ」
アヅマは悲しそうに言った。本気でそう信じている。
「バカだな、お前。俺がお前を幸せにしてやるって言ってんだ。信じろよ」
「無理だよ」
彼は真剣な顔をしてアヅマを見つめた。
「恋人にならねえってんなら、もう会わねえ。こんなことしておいて、はい、友達に戻りましょうなんて、俺には出来ない」
「え……」
もう会えない? アヅマは狼狽えた。
「何で? 俺は気にしないって言った」
「てめえが気にしなくても俺は気にするんだよ。不誠実なことはしたくない」
パニックになって、言葉が出てこない。代わりに涙が出てきた。滂沱の涙が枕を濡らす。彼の指が涙を拭う。それでも涙は止まらなくて、しとどに濡れる。
「嫌なら、恋人になるって言え」
「……俺なんか、誰にも必要とされなくて、居ても居なくても一緒で、価値なんかなくて、何にもあげられるもの持ってないのに」
「お前が居てくれればそれでいい」
「ひとりしか居ない友達、失いたくない」
ミツギの薄い唇が涙を吸い取る。
「その代わり、俺が一生で唯一の恋人になってやる」
「何でそこまで言うの。俺なんか」
「俺なんかって言うな。俺にとってはお前はそれだけの価値がある。俺にとってお前は特別なんだ。誰と出会っても、お前を思い出した。お前がそばに居たらどんだけいいかって何度も思った」
「でもそれは子供の頃の俺だろ。大人になった俺を見て、オメガだって知って、ガッカリしたんじゃねえの」
ミツギは笑った。あの頃の、優しいお兄さんだった頃の表情のままで。
「本当にてめえはバカだな。お前は昔と変わらず、純粋で可愛いままだよ。それにオメガなら堂々と俺のもんに出来る」
アヅマは彼の肩に頭を押し付けた。
「ずっと俺のもんで居てくれるの?」
「ああ」
「ほんと?」
「ああ」
アヅマは顔を上げた。泣き腫らした顔だったが、明るくなっていた。
「じゃあ、恋人になってもいいよ」
「偉そうだな、てめえ。あんなにぐずってた癖に」
「じゃあ、やめる?」
甘えた声で言う。断られることを怖がって、でも断られないことを知っている声だ。
「やめるかよ。せっかく俺のもんになるのに」
ずっと孤独で、すべてから拒絶されて、何もかもを拒絶して生きてきたアヅマに、ひとつ確かなものが出来た。

 ガチャガチャと鍵を鳴らして、ドアを開ける。ふわりと甘い香りが漂ってくる。リビングを通ると、いつも脱ぎ捨ててある服が落ちていない。今日は片付けたのではないだろう。今日から一週間、アヅマがヒートだった。コートやジャケットを持って、寝室に向かう。
「ただいま」
ベッドの上に綺麗に積み重なった大量の服たち。ドーナツ形に並べられているそれらの真ん中にアヅマは横たわっていた。寝ていたのか、ぼうっとしている。
「……ん。お帰り。……いい匂いする。それちょうだい」
さっそく、ミツギが先ほどまで着ていた服を要求する。渡してやると、ウキウキと輪の中に加えている。今日から一週間、二人はヒートを共に過ごす。付き合い始めて一年。ヒートを共に過ごすことはあったが、番になることは怖がっていたアヅマを説得して、やっと番になる日が来た。
「綺麗に出来たじゃねえか」
「うん。自信作」
「入っていいか」
「いいよ」
ドーナツを崩さないように輪に入る。アヅマの瞳は蕩けて潤み、頬は赤く染まっている。「首輪」はしていない。今日、このまっさらな頸に噛み跡をつける。アヅマはミツギに甘えるように凭れかかった。最近出来るようになったこのアヅマの甘えは、ミツギにとって心地いいものだった。元来アルファは番のオメガを大切にするが、ミツギは契約などなくてもミツギのオメガであるアヅマを大切にしている。他人に甘えることなど知らなかったアヅマが唯一信頼して、甘えることが出来る存在であることが、ミツギを優越感に浸らせた。アヅマはミツギの首に腕を回して、顔を近付ける。
「ちゅーして」
「ん」
これもアヅマの甘えである。ちゅっ、ちゅっと、軽く音を立てながら、唇を合わせる。それだけで、アヅマはフェロモンを大量放出する。ミツギはアヅマのこの甘いフェロモンが好きだった。
「我慢できたか」
「我慢した。だってミツギじゃないと満足出来ねえし」
お互い服を脱いで肌を合わせると、設えたかのようにぴたりと重なる。アヅマもミツギも肌を合わせる瞬間が一番幸せな瞬間だった。
 体中を愛撫され、体も心も溶けきったアヅマは、ミツギが自分の中に入ってくるのを待つ。ミツギが避妊具を開けて、彼のそれに填めるのをうっとりと眺めていた。アヅマは足を広げて腹の上で抱えて、その時を待った。ミツギが入ってくる。それが堪らなく良くて、嬌声をあげた。
「あああっ! あっ、あ……」
「すげえ、締まる……」
揺さぶると喘ぎ声が断続的にあがる。
「早く、もっと奥まで来て……」
「煽んな、エロガキ」
ミツギの中では、アヅマはいつまでも小さい子供だった。本当の子供相手にこんなことはしないけれど。ゆっくりと進み、最奥まで届くと、アヅマは歓喜の声を出した。
「あっ、あっ、んっ、すごい、奥まで来た……」
「ふーっ……」
実はアヅマのヒートに合わせて、ミツギもラットが始まりかけていて、理性が飛びそうだが、何とか堪えている。せっかくの一生に一度のチャンスを、理性をなくして終わらせたくない。ゆっくりと腰を動かし、奥を突く。
「んっ、やっ、あっ」
奥を突くだけではなく、引き抜いたり、浅いところを擦ってみたり。
「あっ、あっ、んぅ、きもち、イイ……」
ミツギはアヅマが快楽に浸っているのを見ると、情欲が揺さぶれるタイプだった。腰の動きを早くすると、アヅマの悲鳴も高くなる。
「あっ、あっ、イイッ、好き、好き、ミツギ……! もっと、もっとして……!」
堪らず唇を塞いだ。悲鳴が二人の口内で木霊している。
「んーっ、んっ、んぅっ!」
「俺のこと、好きか?」
「うん、好き! 大好き!」
ミツギは自身のそれを一旦引き抜いた。アヅマの後孔は寂しそうに絡みついて名残惜しいが、また入れるので気にしない。アヅマの体をひっくり返し、後背位にする。腰を掴み、またアヅマの中へ侵入する。
「あーっ! あっ、すごい!」
腰を打ちつけ、最奥を力強く突く。
「あっ、あっ、あんっ、あっ、あっ」
「そろそろ限界、だ……」
「俺もイキそう。イッて! 俺の中でイッて!」
結腸に亀頭をぐりぐりと捩じ込むと、アヅマの粘膜が痙攣し、ミツギを締め上げる。
「イクッ! あああっ!」
「はっ……、く、噛むぞ」
「うん、噛んでいいよ」
ミツギはアヅマの上半身を寝かせて覆い被さると、頸に勢いよく噛みついた。頸を噛んだ後も交歓は続き、結局寝たのは朝になってからだった。
 昼過ぎに目覚めた後、傷付いた頸を手当てした。痛いとアヅマはぼやいたが、それ以上に幸せそうに笑っていた。

 ミツギは本来性欲もあまりないタイプで、ラットもほとんど起きなかったのだが、アヅマと過ごすようになってから、一定の周期で来たり、アヅマに触発されて起きるようになった。勿論、望まないのであれば抑制剤を飲めばいいのだけれど、わざと抑制剤は飲まず、アヅマとラット期間を過ごすことにしている。普段のセックスは弾数が打てない分ゆっくりとしているのだが、ラット期間中はおおよそ自分でも信じられないほど、性欲が湧くので、アヅマと熱い夜を過ごすのにちょうどいいのであった。あの夜、アヅマの部屋を訪ねた時は、本当にたまたま珍しくラットが起きた。まずいと思って退勤した後、家に帰るはずがアヅマの元へ向かっていたのだった。結局、気付いていなかっただけで、幼い頃からアヅマのことを好きだったのだ。好きな相手、しかもちょうどいいことにオメガ、の元へアルファが無意識にでも向かうのは当然のことだった。経緯はどうあれ、二人は結ばれた。一年かけて説得し、番にもなった。ミツギはアヅマを運命の番だと思っている。幼い頃から思い合っていて、再会し、ベータだと思っていた相手はオメガになっていて、ミツギ自身ほとんどなかったラットまで起きるようになった。運命だとしか思えなかった。自分でも驚くほど、アヅマを大切に思っており、幸せにしたいとも感じている。アヅマと恋人になった後は、彼に近付く者は男も女も関係なく警戒して、彼を呆れさせたけれど、ミツギは悪いとはまったく思っていない。番解消をするカップルも居るというが、あれは一方的なもので、オメガが苦しむだけのものだ。その点、運命の番は一生結ばれると言われているけれど、そもそもミツギは彼を放す気が毛頭ない。自分たちの関係は永遠であり、幸せになれると確信している。今日もアヅマの待つ部屋へ帰る。身の回りのことに気がまわらないミツギを、週に何日も通って妻のように世話をしているのだ。そのうち、同棲に持ち込もうと思っている。足取り軽く、部屋への一歩を踏み出した。

あとがきなど
初めてのオメガバースです。書いてみたかった~!
アルファがオメガになるわけじゃないです(笑)
アルファにしてオメガというのは、英語でなら「A to Z」、原点にして頂点という意味で、
永遠という意味になります
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